──2年前


『はい!!じゃあ、あとでチェックするから、それまで楽屋にいていいよ!!琉飛くん』

『……寝ててい?』

『ダメ!!旅立ったら帰ってこないでしょ』

『……むう』

『そ…そんな可愛い顔してもダメよ!!』



笑いに包まれながらスタジオを出ると、どっと疲れが溢れて壁に体を寄り掛けた。



──みんな、…元気かな。


琉飛くんShiNeのメンバー大好きだね、とよく驚かれる…けど、あんな…最高の3人を……好きにならない方がおかしいよ。



だから、まるで恋心のように会えないと…悲しくて、切ないの。



ひとつ溜め息を吐いて、楽屋に入った。




『なに溜め息なんか吐いてんだよ、琉』

『いち…』

『琉が欠伸じゃなくて溜め息とか…珍しくね?』



そこには、いるはずのない仲間。大切な、人がいた。



『な……んで』

『撮影で近くに来たから、顔見に来た』



嘘だよ、…だって壱流、今日は京都で撮影だ、って言ってたよ。なんで京都の撮影が横浜の近くになんか来るの。




『利央は今、沖縄。晴は…ドキュメンタリーか何かでどっかの海の底』


あいつサメとかに食われてねえだろうな、なんて笑いながら普通にソファに座りながら雑誌を見ている壱流が信じられなくて、まだ呆然とする。



『…俺らさ、絶対少ししたら、ちょっとぐらい落ち着くから。そしたら、またいつでも会えんだろ』

だから、んな顔してんじゃねえよ、ばーか、と言いながら俺の髪をぐしゃぐしゃする壱流の手があまりにも優しくて。



『みかんゼリーあげるよ』

『今の話の流れにみかんゼリーは必要か』



心が軽くなった途端、疲れも全く感じなくなった。


備え付けの冷蔵庫のもとへ行くと、近くの窓からすっかり暗くなった空が覗いていた。




『………あ』

『ん?』

『今日……七夕』



織姫と彦星が逢える日だ。



『あー…、だからか。今日、笹持ってる子供、京都に沢山いたんだよな』

『…妬かれちゃうかな』


ふふ、と笑いを溢しながら言った一言に壱流が怪訝な顔をする。



『二人は…今日しか会えない…けど、俺たちはいつでも…好きな時に会える、もんね』

『なんか、それ危ない雰囲気だから、ヤメロ』

『…星も妬いちゃう…アイドル……。新しいね』

『新たなカテゴリ作んなよ、ばーか』



そう言いながらも得意そうな壱流の横顔を見て、再び夜空を見上げた。



──ね、織姫さんに彦星さんっていう大切な存在があるように、……俺にもね、…最高の…大切な仲間がいるよ。





「何笑ってんだよ、琉」

「ん、…眠い」

「結局眠いのかよ」




ね、お星さま。……妬かないでね。

俺は、どんな時でも…大好きな人たちに会いに…行くよ。

だから、織姫さんも彦星さんも我慢しちゃ…ダメだからね。


だって、





(大切な人に会いたい理由なんてない)
(会いたいから会うんだ)


そんな俺たちの
       

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